GRID

Sneaker

その旅路の中で、私は《GRID》を徹底的に酷使した。鋭い太陽が照りつける6月の終わりの南イングランドは、まさに“うってつけ” の
環境だと思った。本作で初めて採用したイタリアのレザーである《LOMBARDIA TAN》は、植物タンニン鞣しという極めて古典的な製造方法を取っている。10日間という短い期間のうちになるべく多くの移動距離をこなし、革質にどのような変化が現れるのかを調べる必要があった。そもそも、この革との出会いは特別だった。その男らしく優雅な表情に、私は一瞬で魅了された。サンタクローチェに数あるレザータナリーの中でも極めてナチュラルな色出しと、ミモザやチェスナットなどの木製チップを原料としたオーセンティックな鞣し製法を得意とする、老舗コンチュリアの秀作である。鼻腔を突く華やかなタンニンの香りと、洗いがかかったダブル・ショルダーが醸し出す、その雄々しくもラグジュアリーな肌目と言ったら…。山と積まれた他のイタリアンレザーは全く以って目に入らなくなり、
私はその場で採用を決めた。
 
ぬかるみや芝生の路面や無骨な石畳を歩いて激しい屈曲を繰り返し、慣れない道でのドライビングにも使用した。突然の通り雨を何度も浴びながら、ソールには泥や草片がこびりつき、無数のかすり傷が表面を覆っていった。疲れ切ってベッドに寝転んだ時、ホテルの床に放り出されたその靴は、徐々に逞しくなっていた。限られた製法で作られた天然の革だけが持つ、贅沢な経年変化が始まったのだ。日を重ねるごとに、私はテストという名目を忘れ、この靴に個人的な愛着を感じ始めていた。

気づけば7月に入っていた。滞在最後の夜、徐々に陽が沈みゆく砂浜を歩いた。火災で廃墟となった遊戯施設 “ブライトン・ピアー” の鉄骨が霞みがかっていた。大粒の砂を踏みしめ、トワイライトに薄ぼやけたGRIDは、やがて美しいキャラメル色へと変化していた。

CRAFTSMAN SHIP

COLOR LINE UP