WILD PENNY Ⅱ

Loafer

テーブルに広げられたその革は極めてエレガントであった。透明感のあるきめ細やかな肌目に加え、イメージ通りの完璧な色出し。 “WET TRACK LEATHER” と名付けたその革を指先で撫でながら、私は2年前の6月の“とある日”を克明に思い出していた。
その日、私は英国Goodwoodの会場に構えた店舗の軒先にぼうっと立っていた。それまで鋭く照りつけていた太陽がうっすらと陰り、急な通り雨が会場を撫でつけた。人々は目を細めながら歩を早め、賑わっていた通りはすっかり静かになった。異国の慣れない会場で朝からひっきりなしに靴のプレゼンテーションをしていた私は、束の間の静寂からか、軽い疲れを感じていた。すると、我々の軒先に一人の紳士が現れた。雨やどりだろうか。絶妙なネイビーのブレザーと、張りのある淡いブルーストライプのボタンダウン・シャツ。そして、しっかりとプレスされた踝丈のホワイトトラウザー。襟元には銅を切り出して造られたであろうGRRCのラペルピンが輝いていた。ふと足元に目を移すと、降り出した雨でぬかるんだ道を歩いてきたのか、履きこまれたローファーに泥と芝生がこびりつき、爪先にはうっすらと雨水が染み込んでいた。その完成されたムードと貴族的な佇まいに圧倒されたのを覚えている。WILD PENNYのアップデート・コンセプトは“この瞬間”がモティーフとなった。

洗練されたスタイルの足元を飾るために、前作のパターンは一度解体され、ラグジュアリーなカッティングへと再構築した。ステップにはロングドライブや会場での歩行に耐えうる様、しっかりとしたクッション性を加え、味わい深い贅沢なオリジナル・レザーライニングをあしらった。ハンドソーンで仕上げられたアッパーにはバーニッシュ(焦がし)と磨きをかけた後、同色のクリームで2段階の繊細なグラデーションを施した。そして、染色時に強い撥水加工を施したWET TRACKは、時に“急な雨足”にさらされても、“泥や芝生”すら、綺麗に拭き取ることができる。

彼は私の目線に気づいたのか、商品を手に取りながらひとしきり眺めた後、満面の笑顔で“Good work”とつぶやくと、ブローシャーを手に去っていった。外は先程よりも、すこし小雨になっていた。

CRAFTSMAN SHIP

COLOR LINE UP