WISHBONE

Slip-on

このデザインコンセプトが生まれるはるか以前の話である。私は酷く動揺していた。その時仕上がったリボン・コードスリッポンの完成度の低さに愕然とした。何というか、 “全てがバラバラ” だったのだ。履き心地や素材とのバランス、そして醜いルックスも含め、目論見の稚拙さを痛感した。プロジェクトは暗礁に乗り上げ、その仕上がりに落胆したチームは全てを忘れようとした。しかし、当時の手痛い失敗こそが後の我々に取って重要なデザイン・フィロソフィーを生み出す 然るべききっかけとなる。

数年後、この企画はふとした瞬間、実にアナログな仮説によって再始動することとなった。ヒールカウンターとトップライン、
そしてリボンコードを同一のパートで構成することにより、靴全体にしなやかな剛性感をもたらすことができるのではないか。
“あの忌々しい日” から数多のモデルをデザインしてきたが、私だけはあの失敗を完全に忘れることはできなかった。
殴り書きのようにデッサンしたイラストを見ると、トップラインはまるで “アッパー・アーム” であり、ヒールカウンターはさながら、 “ロワ・アーム” の様であった。《WISHBONE》と名付けられたそのプロジェクトは、新たなチームによって動き出した。バラバラだったピースを手繰り寄せる様に、マテリアルやパターンの策定は慎重に行われた。レザーには、退廃的な50’sのオート・カラーパレットを取り入れた《HISTRIC OIL LEATHER》を採用。手仕事で彩色することにより、しなやかで味わいのあるムードに仕上げた。ライニングレザーとヒールステップにはエイジングを楽しめる《MOTOR HIDE VINTAGE》を取り入れ、柔らかなフットタッチのヒールスポンジを配した。フィット感のコンセプトは『息を呑むほどの剛性』とした。足を入れた瞬間に全てを理解出来るような完成度が必要だ。そして、このイメージを実現できるまでは開発を止めないと心に誓った。

その後、初めてサンプル・アップされたWISHBONEを早速テストした私は、息を呑むどころか笑うしかなかった。
目論見は、“全て当たっていた” のである。

CRAFTSMAN SHIP

COLOR LINE UP